「ごめんね総悟…あたし…、旅に出ることにしたんだ…」

「え・・・・・・・?」

「今までたくさん迷惑かけて、ごめんね。それから…本当にありがとう。」

「な んで……ま、待てよ わけわかんねェ…!」

「さよなら…総悟」

!!」











ニー・プリンス












「―っていう夢を見たんでさァ…」




太陽が昇ったばかりの気持ちの良い朝。
キラキラ日が差し込んで来るあたしの部屋。
そのあたしの部屋に突然来客が駆け込んで来たのは、たった数分前のこと。



「へーえ〜それはまたけったいな!」
「全くでィ。馬鹿馬鹿しい。…ゼェ ゼェ
「そんな息切れしながら言っても全然説得力ないからね?ほんとは心配して見に来ちゃったんでしょ!ふふふふふ総悟ってば可ぁ愛いぃ〜ぃ♪」
「ちょっ、触らないでくだせェ 変態が移る」
「もーう!そんな照れないの!」
「照れてねーよ」



いきなり血相変えて飛び込んで来るから、ほんと何事かと思った。
夜ばいかと思ったけど、ちょっと朝方すぎるしねぇ?



「じゃ 俺はこの部屋に何一つ用はねえんで帰りまさァ」
「えー!?せっかく来たんだから一緒に遊ぼうよ〜〜!!ってか夜ばいとかしなさいよー!! ホラ坊や、あたしとイイコトしなぁ〜い?」
「近づくんじゃねェよ 痴女」
「うわ痴女とかヒド!まぁ否定はしないけどね!総悟ってばほんと朝食にしたいくらい可愛いもの♪」
「そしたら小腸塞いで便秘にしてやらァ」
「あららー、反抗期?でも大丈夫よ!総悟だったらずっと体内に居させてあげるわ!」
「…」
「ウェルカム☆」



そう言ってウィンクしたあたしを、総悟は半分(以上)呆れた視線で見た。
いくらドSな総悟でもここまでくるといじめ甲斐が無いらしい。

だってさ〜〜そんな糞みたいな夢見てあたしの部屋に駆け込んできちゃうようなビビりで可愛い総悟を朝から拝めて幸せなんだもんっ!!あたし幸せ!
おかげで今日も一日良いことありそうだよ!



「だいったいね〜あたしが“今までありがとう、さよなら…!” なんて素で言えるようなセンチメンタルな女わけないじゃん!」
「あーそれは確かにそうですねィ。さすが、自分のことよく分かってらァ。」
「あははっ!何それなんかムカつくんだけど
「それは……分かってんだけど、な」



総悟がふと表情を曇らせた。




「何か知らねェけど…やっぱ恐かったんでさァ。情けねェけど…がもし居なくなったらって思ったら、…」
「思ったら…?」
「・・・・・・・・」
「言ってごらんよ、ホレ!!」
「……やっぱ何でもねェ。のそのニヤついた顔がムカつくから」
「オーイーーッ!!!!そこまで言ったら言えよーー!!今すごいイイ事言う雰囲気だったじゃん!!喜ぶ準備しちまったじゃねーかコラァ!!!」
黙らねェと鼻からスイカ突っ込むぜィ
はい。




鼻からスイカってあなた。出産じゃないんだから。
(出産は鼻からスイカ出すくらいの痛みってよく言うよね。)

いいじゃんねえ?甘い言葉のひとつやふたつ。減るもんじゃないんだしさー



「ねえー?総悟」
「何でィ」
「もし あたしがほんとに旅に出るって言ったらどうする?」
「偽造した地図と狂ったコンパス持たせてやらァ」
「うーわ」



何て奴だ。愛も情けもない。

全くもういい加減にしてほしいわ。そのドSをどーにかしなさい。
そんな可愛い顔してその性格とか、もう…最悪っていうか最高っていうか ほんとドツボですからね!!
悪いけど クリーンヒットですから!!!いっそ犯罪なほど萌えますから!!

もうすぐ付き合って三ヶ月だよ?そろそろ倦怠期入って良い頃のはず。
なのにこのラブラブっぷりってどうよ!?一方的にだけどさ!!…いやそれは言わない約束です

良いもんね。
あたしの愛はそんなことで倒れない!



「何か、総悟になら萌え殺されてもいーな あたし!」
「分かりやした今すぐ燃え殺しまさァ」
(無視)ねっ、チューしていい?今最高にチューしたぁいvv」
「嫌でィ」
「ええー何で!?」
「何でも!」
「もしかして照れてるー!?可愛いーま〜ったく子供だなぁ〜〜総悟ってばv」
「いや全然意味わかんねェし。…っつーか」



総悟がちょっとふてくされた視線をあたしに向けた。



「ん?なに?」
は…やたら俺のこと可愛い可愛いって言うけど、そんなん言われて俺が嬉しいとでも思ってんですかィ?」
「え?嬉しくないの?」
「あたりめーだろィ」



あらら。それは心外だ。

でも可愛いもんは可愛いんだよね〜☆
と心の中で開き直って、意地悪っぽく笑いながら




「そんなの総悟が可愛すぎるのが悪いんだよ!童顔最高!




って言ってみた。(ただの変態)
総悟はため息をついて話にならん、みたいな仕種をした。
そんなん言ったってしょんないじゃん!総悟の可愛さなんて半端じゃないんだから!!いやもちろんカッコイイよ?でもマジすっげえ可愛いの!!
あたしは年中無休でこのプリティフェイスにそそられてる。

こちとら理性保つの大変なんだよ!

あたしがそんなアホなことを考えてると、いきなり総悟がふっと下を向いてしまった。
俯いたまま押し黙ってる。




「(…あり?)おーい総悟ー?生きてるー?」




ひょいと総悟の顔を覗き込んだ、まさにその瞬間。




グイッ


いきなり腕を掴まれて、もの凄い力で引っ張られた。




うぅぅををおぉ!!!?




えええ何!?と思ってるうちに目の前は天井に早変わりした。




「え…え??」




頭が真っ白になって呆然と天井を見つめる
と、ふと目の前が影になって。そこに総悟が現れた。


え、、、嘘…信じらんない。


信じられないけど あたし、総悟に押し倒されてる…!!

意外に奥手でキスはおろか、なかなか手を握ることさえしてこないあの総悟が
いやもしかしたらあたしにそれだけの色気が無かっただけなのかもしれないけどね?
そう考えると押し倒される日が来るなんて進歩だよ!感動☆(待て)

…って言ってる場合でもないか。
手が早そうで遅い奴はいきなりどういう行動に出るかわかんないから困る。




「あーあのー…総悟くーん…?」
「聞こえやせーん。」
「オイィッ!!ちょっと君ィ!いきなり何してんのさぁ!!どうすんのすごい興奮しちゃうじゃん!!
「興奮すんのかよ」
「ええそりゃあもう!!っとーまあ冗談はこのくらいにして!とりあえずどきなさい。萌えるけどどきなさい」
「何でですかィ?」
「ええ!?な、なんで…って…、知るかァ!聞くなこのムッツリ!!!」
「萌えるなら良いじゃん。それとも俺みてーなムッツリのガキの“テク”じゃ満足できねェ?」
「はぁ!?なに言って…、……んっ…!?」



突然 ぐわっ と唇を塞がれた。



え。待て待て。ほんとにどうしたの総悟。ってか誰これ?本当に本物の総悟?





「ん…総、…っ」




疑うまでもない。

総悟の唇の感触はあたしが一番よく知ってる。整ったピンク色の柔らかい唇。
包み込むように、あたしの唇を優しく濡らしていく。

だけど 今までほとんど触れるだけのキスしかしてこなかった総悟が 今は




「ふっ…ぁ…ッ」




口の中をはいずり回る生暖かい感触。
いきなり入って来たそれのせいで、いっそう息がキツくなった。


一度 解放されたと思っても、総悟はすぐに舌を滑り込ませてくる。
逃がすまいと強く強く押し付けられたあたしの唇に自由は無い。


総悟の思うがままに絡まる舌。潤う唇、荒い呼吸。

どう考えても エ ロ い !!



そんなことをしばらく繰り替えして そろそろ酸欠で死ぬかもというところで、唇が解放された。
総悟は若干呼吸を乱した様子であたしから顔を少し離す。




「……ふぅ…」

「はぁ、はぁっ……そ…ご、君に何が起きたの…!?ちゃん死ぬところでしたよッ…!!」

「なァ、こんなことする奴でも可愛いか?可愛いって言えんのか?」

「はっ!!?」




いったい何を言ってるの?あなた!!っつか質問に答えろよ




「俺が本当にの言うような可愛い奴だったら、お前がこんなに苦しがるようなキスをするかって言ってるんでィ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




うん?

日本語って難しいね


よし整理しよう。んーと?
総悟は可愛いって言われるのが嫌いで でもあたしは可愛いって言い続けて




…てえことは、今のキスは可愛いと言われた腹いせ…!!?




「ままままさか、そんなことのためだけにあたしのいたいけな唇を犯したの!?」
「自分で言うんじゃねェよ。」





バカじゃないのバカでしょバカだよねバカだろ!!





返せぇええあたしの酸素をー!!あたしがキスしていい?って言ったら嫌とか言ったくせに!!」
がアホなこと抜かすからだろィ。」
「あたしは別に、っ…!」





総悟の顔が近くなって また、そっと唇が重なった。



でもさっきとは違う 触れるだけのキス。

さっきのを大人のキスというなら、これは子供のキスといえると思う。


総悟は短いキスのあとでスッと唇を離した。
ふと前を見ると、総悟は真剣な面持ちで。





「…お前の言うとおり、俺はまだガキだからこんな軽いキスでも充分幸せでさァ。相手がお前ならな。」
「総悟……」
「でも…」




総悟…、何か泣きそうじゃない?何でそんな泣きそうな顔して…
今にも泣き出しそうなのを必死で堪える子供みたいな。ああああコレはヤバイね、うるうるな瞳が…か、か、



可愛すぎる…っっvv
「っ…分かんねェ女だな!!それを言うなっつってんでィ!」(怒)
「だって〜…」
「今度言いやがったら 犯す。」
「何でそうなんの!!」
「それが嫌だったら旅にでも出るこった」
「……」
「・・・・・・・・・・・・・・いや、やっぱ嘘。それはダメ」




総悟はまた視線をあたしに移して。割れ物に触れるかのように優しくぎゅっと抱きしめた。
体勢が体勢だから総悟の体重がかかって少し重たい。けど、すごく温かい。





「お前だけは 死んでも絶対離してやらねェ。」





そう言って総悟は抱きしめる腕の力を強めた。もう…何ていうの?ビバ☆ツンデレ!(空気読め)




「……なァ 、」
「ん 何?」
「もう結婚しちまいますかィ?俺達」
「ウンそーだ……ねぉえ゛ぇえええ゛!!!?
「どうせは俺が居ねェと生きていけねーだろィ?俺もを早めに捕まえておきてェし」
「いいいや、だからって普通そんな簡単にプロポーズす…る、ん……っ!?」





またいきなり奪われた三回目のキスは、優しく軽く でもちょっと長く そんな子供と大人の真ん中のキス。





あたし達は、大人でも子供でもなくて。


でもそんな今だからこそ  あたしは 「今」のあなたを。





「あのさー総悟!」
「何でィ?」
「あたし総悟のこと超々大好きだよ!!」
「知ってらァ」
「だからさ、これからも可愛いって言わせて!!」

「…は!?」

「だってどうせすぐに言えなくなっちゃうんだから。総悟は大人になったら絶対今よりずぅっとカッコ良くなって、可愛いなんて言えるような男の人じゃなくなっちゃうもの。」
「……」
「今だからこそ言えることなの。だから…ね?お願い!」

「…はあ」



それはつまり、これからもあたし達が一緒に居るっていうことを意味するんだけど。
それを総悟が悟ってくれたかどうかは分からない。

でも




ため息のあとに



“仕方ねェな”



そう言ってはにかむように笑った総悟は、今まであたしが見て来た中で、史上最高に可愛いかった。









   おしまい








◇あとがき◇
久しぶりの銀魂短編です〜。いきなり微エロ気味ですね〜、さすがですね!(開き直り)
沖田夢ということでリクを頂いたので今回書かせて頂きました。甘々かほのぼのという話だったはずが… すみません!!(土下座)
ヘタレ沖田が好きなんです。鬼畜お好きな方すみません;
真面目(?)な話で愛されヒロイン書くのは難しいですね〜!!精進しますっ!!;
ここまで読んで下さりどうも有難うございました!お粗末様でした。


20070608 asahi
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